関西で活躍する「いまどきの庭や」さん
大阪府の東部、八尾市の郡川地区にある「ガーデンデザインオフィス 萬葉」を訪ねました。代表の北谷知之さんは、関西の新しい商業施設やレストラン、個人宅などでガーデンデザインを担当し、自身が手がけた庭は「スタイリッシュで美しい」のはもちろん、そこに暮らす人、訪れる人たちが「居心地がいい」と感じる空間を目指しています。
植物の力を借りて、誰もが健やかになれる「庭」をデザインする――そんな「いまどきの庭や」さんなのです。
そんな北谷さんは2012年から、自身の庭づくりにバクタモン®を取り入れるようになりました。お米、野菜、果樹、畜産、堆肥作り……あらゆる分野で活躍してきたバクタモン®ですが、庭づくりに活用する事例はこのシリーズでは初めてです。
萬葉では、いったいどんな使い方をしているのでしょう?


造園に向かない大阪の土
自ら「庭や」と称する北谷さん。決められた空間に、5年後、10年後の生長を見越して花木や石を配置していくのが仕事です。とはいえ、自ら樹木や花を生産することは少なく、大部分を専門の卸業者から購入して植えているそうです。
となると、いったいどこでバクタモン®を使っているのでしょう?
庭の土を健康にしたい。ところが、大阪は土が悪い。造園的には最悪なのです
大阪の土はキメの細かい緻密な黄褐色の土で、大相撲の土俵に使われているほど。突き固めるとカチカチに固まりやすく、粒子の間に水と空気が入りにくいため、植物の根がなかなか伸びない性質があります。また、大阪は西側に海があるため、西日が強く、葉は焼けるし地面が乾燥しがち。そんな悪条件を克服して、植物が伸びやかに育つにはどうすればよいのだろう?そんな悩みを抱えていた時、人伝てに知ったのがバクタモン®でした。


土の健康が、住む人の健康につながる
土が健康になれば樹木が健康になり、樹木が健康になればそのまわりの空気が健康になる。そして、そこに住まう人たちが健康になるはず
そんな発想からバクタモン®を土に散布して、まず植物が根を張りにくい大阪の土を改善したいと考えました。
萬葉では、毎年春になるとこれまで手がけたお客様を一軒一軒回り、庭の手入れをします。
3~4月に行う主な作業はマルチング。地面に木屑を撒いて表面を覆いながら、コーヒータイプのバクタモンBMK®を全面に散布していきます

さらに、お庭には新しい樹木を植える時もバクタモン®を使います。業者から購入し、運び込まれた植木は、根っこを切られて動かされます。
植え付ける時に、周囲の環境を少しだけでもよくしてあげたい。そこで、植え付ける穴にバーク堆肥とバクタモン®、さらに根に酸素を供給する『ネニサンソ』。この3種類をブレンドしたものを投入して、発根を促しています
バクタモン®を導入した当初、目に見える効果はすぐに現れませんでした。ところが、「草花を植えようと土を掘った時、3年目の庭より6年目の庭の方が、あきらかに土の色が黒くなっているんです。これはきっと、微生物の働きが活性化され、有機物を分解した証。そして、そこには細い根がいっぱい生えているんです
バクタモン®を入れて3年目までは、土俵のような茶色い土が残っていますが、そこから徐々に黒くなっていく……そして毛細根が増え、植物たちも元気になる。そんな効果を実感できるようになってきました。


好景気に乗り、庭師が急増
さて、「いまどきの庭や」として活躍する北谷さんに、大阪の庭事情の歴史を振り返っていただきました。
うちは曽祖父の代から、ここで植木屋を営んでいました。私で四代目になります
昭和初期、初代が創業した頃は、市場で買い付けた苗木をリヤカーに乗せて運び、お寺や神社で開かれる露天市で販売する。そんなスタイルが主流だったそうです。
戦後になると、大阪周辺で都市開発が進み、農地が次々と宅地化され「庭付き一戸建て」のマイホームを持つ人が、どんどん増えていきました。
戦後、祖父の時代には植木を販売するだけでなく、新しいお庭に庭木や石を運んで、現場で庭を施工するようになっていきました
昭和の経済成長と、宅地造成ブームの波に乗って、植木屋から造園業へ。当時は、親方の元で修業を積んだ職人が次々と独立して一人親方となり、八尾市の郡川地域周辺だけで一時は400軒の造園業者が存在していたそうです。
だから、僕の同級生には造園関係者がいっぱい。今も年に一度一緒に旅する8人の仲間のうち、5人が植木屋です
そんな中、四代目の北谷さんは大阪芸術大学の環境計画学科を卒業後、父が経営する北谷萬樹園へ入社しました。90年代末期はバブルが崩壊し、景気も低迷。注文住宅は敷地面積が少なく、家とガレージでめいっぱい。本来は、庭に木を植えるのが仕事なのに、フェンスやガレージまわりの仕事が多くなり、本格的な植栽の仕事は少なくなっていきました。
ちっとも樹木にふれる機会がなく、自分のつくりたい庭がつくれない。そこで、北谷さんは30歳で独立を決意。家業とは別に「萬葉」という屋号を掲げて、単独で活動を始めます。


建築家の事務所を訪ね歩く
新たに屋号を打ち立てて仕事を始めたものの、なかなか「萬葉」の仕事に結びつきません。とにかく、自分の存在を知ってもらわなければ。そこで北谷さんは、実家や近所の造園屋の仕事を手伝いながら、関西で活躍する建築家を訪ね歩くようになりました。
それまでは、ハウスメーカーや工務店からの仕事が中心で、自由に庭をデザインする余地はありませんでした。けれど、家だけでなく敷地の空間全体をデザインする建築家なら、お客様に心地の良い庭を提案すれば採用されるかもしれない。そう考えたのです。
ネットで建築家のHPをしらみつぶしに探して、『いいな』と思ったところへ、アプローチしてきました
自己紹介のリリースを携え、建築事務所を訪ねて自己PRする日々、20軒回ってもなかなか成果は上がらず、仕事にはつながらなかったそうです。それでも北谷さんは諦めず、少し趣向を変え「有名な雲の上の人だけど、それでも会いに行こう」と奮起しました。
憧れの建築家、横内敏人さんもその一人。「家と庭は一体」というコンセプトの元、手がけた家や建物は、数々の建築賞を受賞。京都造形芸術大学の特任教授としても活躍されています。
横内さんの事務所をお訪ねした時は、本当に感動しました。造園に関する意識が高く、庭を担当する造園屋にもかなり積極的な意見を提案されるようです
第一線で活躍する建築家を訪ね続け、刺激を受けていたある時、
「個人のお宅の庭をデザインしてみませんか?」
と、同じ八尾市の設計事務所から電話がかかってきました。それは新築の個人の家で、施主は茶道を嗜む方なので、茶庭的な空間をつくってほしいとのことでした。
当時、僕自身もお茶を習いはじめていました。お茶の先生に茶庭についてお話を聞いたり、茶庭の本を読み漁って調べたり。とても興味深い仕事でした
それが「萬葉」の仕事第一号。それからひとつ、またひとつと「萬葉」への仕事の依頼が増えていったのです。


制御する庭から自然に寄り添う庭へ
昔ながらの庭師の仕事といえば、和風建築の家に盆栽風の松や、しっかり刈り込んだ庭木を植える日本庭園を思い浮かべますが、現在は個人宅や公共施設の庭でも、求められる樹種や庭づくりのコンセプトは大きく変わっているようです。
北谷さんによれば、昭和の一般住宅に広がった庭園は、盆栽のように伸びようとする樹を、毎年同じサイズに切り戻して仕立てていく「制御」の発想が強かったそうです。それには一本一本の木に大きな空間が必要で、それなりに広い場所でなければ実現しません。
一方、北谷さんが樹木や庭、それを取り巻く家や空間づくりを学ぶ中でもっとも感化されたのは、造園家の武部正俊さんの仕事でした。かつて、樹木と竹が中心で、花はあっても万年青や籔蘭……的な世界だった日本の庭に、積極的に花を植える手法を取り入れた人でもあります。
雑誌の紹介記事を見て、かっこいい!憧れましたね
そうして新しい庭づくりを学ぶうちに、だんだん目指す庭の方向性が定まっていきます。
もう少し自然に寄り添った形で、狭い空間でも実現できる。自然そのものの魅力を引き出す……そんな造園ができるといいな
いつしか、そんな思いが強くなっていきました。新しく庭をつくる際に心がけているのは、人間の目線に近い低中木を選ぶこと。春はサクラ、ツツジを中心に色とりどりの花が咲き乱れ春爛漫!落葉樹の新芽も芽吹きはじめ、優しめの緑が明るい空気をつくります。初夏はブルーベリーや紫陽花など、夏はサルスベリ、秋はモミジやドウダンツツジなどの紅葉やツリバナやオトコヨウゾメなど実を楽しめるもの、冬は柚やすだちなど柑橘……と、四季の移ろいを楽しめる樹木を植えるように心がけています。


神社の参道商店街に新しい庭を
そんな北谷さんの元には、個人宅の庭だけでなく、多くの人が訪れる公共スペースの庭をデザインする仕事が舞い込むようになりました。堺市のつぼ市製茶本舗が古民家をリノベーションした「茶寮 つぼ市製茶本舗 堺本館」の庭や、お百度参りで有名な東大阪市の石切剣箭神社の参道商店街にできた商業スペース「石切回廊」のガーデンデザインもそのひとつ。
北谷さんと一緒に「石切回廊」の庭を訪ねてみました。
お店前のオープンな空間に、紅色の花をつけるベニトキワマンサクや、沖縄のツバキなど、四季折々の花が楽しめる花木が植えられ、足元にも草花が点在しています。
草花と木と同様に、庭を構成する要素として欠かせないのが「石」です。北谷さんは、元萬葉のスタッフ川畑智史さん、現萬葉のスタッフ大西達也さんとともに香川県高松市庵治町まで庵治石を調達に行き、川畑さんを中心にしてひとつひとつ組み上げて石垣を築きました。そんな石切回廊の庭には、多くの参拝客が訪れ、買い物や飲食を楽しみつつ、ほっと一息。そんな光景が見られます。



「庭やの枝店」をオープン
さらに北谷さんは、庭の手入れをする中でやむなく切られた枝を廃棄するのではなく、活かしていこうと「庭やの枝店」という活動も展開しています。
我々が切った枝の中には、かっこいいものや面白いものがたくさんあります。それを捨てずに残して、インテリアや飾りとして活かしてほしい
そんな思いから始めた試みで、近所の子ども園に提供して、子どもたちの作品づくりに活かしたり、乾燥させた木や花を束ねてつくる「スワッグ」づくり、庭の手入れに使う「庭ぼうき」を作るワークショップなど、木や植物を生活の中に取り入れて、身近に感じられる試みも続けています。
街の花屋ではなかなか手に入らない大ぶりの枝や、ドラマチックなドライフラワーは、飲食店や美容院のインテリアにも人気があるのだとか。
いずれは常設の『枝店』を出したい
そもそも英語で庭を意味するGardenの語源はGuard Eden=楽園を守ることにあるのだそうです。
囲われた場所を花園にするのが僕らの仕事です。その環境を改善していきたい。それができるのは微々たる空間ですが、あちこちで重ねていくことで、そこに暮らす人、訪れる人が心地よく過ごせる空間を増やしていきたい。そう思います

健康な庭づくりは、土づくりが原点。そう考える北谷さんの庭でもまた、バクタモン®が活躍しています。





2023年3月23日
取材・文/三好かやの


●萬葉 https://office-manyo.com/
●茶寮 つぼ市製茶本舗 堺本館 https://tsuboichi.co.jp/store/sakai
●石切回廊 https://ishikirikairou.jp



 




マルヤファーム様
「糖度世界一、ギネスが認めた包近のモモ」

(株)吉岡農園様
「土とともに40余年。栽培から販売まで、自ら手本を示す和歌山の肥料店」

宇城農園様
「『山椒ミルク』が大人気、山の中のジェラート店」


(株)村上ファーム様
「コウノトリ舞う里で生まれる、大粒の黒大豆」

廣井昌利様
「健康と取り戻すためにリンゴを栽培。人も地域も元気に。」


(有)ファームランド豊様
「イモ、豆、カボチャ…温暖な気候と微生物のチカラで、多品目の露地栽培を実現」

(有)須田フルーツ様
「キラリと輝く果実は土づくりから」


(有)おりた園様
「バクタモンで世界に通じる緑茶を育てる」


(株)しろとり動物園様
「小さな微生物から大きなゾウまで、みんな学べる動物園」


(有)松山農産様
「微生物のチカラで廃棄物を、宝物に!」


越福雄様
「古木と土のチカラを生かし、リンゴを顧客に直売」


神奈川肥料(株)様
「土中の菌の力を生かす熱水消毒のパイオニア」


山崎香菜江様
「安来発。ルビーのような大粒の章姫を栽培」


大杉ぶどう園様
「ブドウの味は、毛細根が決め手!」


(有)イーモン様
「『E-MON(いいもん)』で、農家をトータルにお手伝い」


(株)茄子葉様
都市近郊で「泉州水なす」を作り続ける

(株)堀内果実園様
「五條の柿が原点 フルーツ満載のカフェが大人気!」


JA壱岐市肥育センター様
「壱岐の牛とともに歩むBMエルド®」


(株)MAKOTO農園様
「半樹摘果とマルチ栽培で、高品質なミカンを育てる」


黒岩洋一様
「微生物の力で、雹害に負けない土と根を育てる」


坂東明文様
「優良菌のはたらきで新しい有機栽培を」


楠正人様
「微生物の力で、土とスイカの味を進化させる」

山本隆様
「バクタモン®を、米、花、野菜にフル活用」


くわの農園様
「全国からファンが殺到!くわの農園の『あまおう』」


■(株)マム・ランド様
「菊と小松菜で田川の農業をリードする」

神奈川肥料(株)様-追記
「猛暑を乗り越え「はるみ」が一等米に」

(株)村上ファーム様-追記
「有機の里づくりで黄綬褒章を受章」

野村農園様
「飛騨高山で伝統野菜と西洋野菜をつくる」

(株)国際有機公社様
「土から農家の経営を変える土壌医」

坪井農園様
「農業は総合職。味で勝負のトマトを栽培」

高鍋啓二様・純一様
「10aで5,000~6,000房。大粒のブドウを作る」