スーパーで大人気。高濃度のさつまいも
鹿児島県南部の薩摩半島に位置する指宿市。
彼方に開聞岳を望む見晴らしのよい場所に、有限会社ファームランド豊があります。平均気温は18℃と高く、霜害も少ない地域。その温暖な気候を生かして、一年中露地栽培ができる全国でも希少な産地であり、1705(宝永2)年に船乗りの前田右衛門が琉球から、からいも(さつまいも)を持ち帰り、普及を始めた『さつまいも発祥の地』でもあります。
社長の松下豊和さん(63歳)は、東京農業大学を卒業後、製紙会社の営業マンを経て、30年前に就農しました。そして1995年、鹿児島県指宿市でいち早く法人化して(有)ファームランド豊を設立。『豊』は豊和さんの父の名前で、現在は長男の寛和さん(37歳)と、じゃがいも、スナップエンドウ、かぼちゃ、枝豆、さつまいもを栽培。
温厚な指宿の気候をフルに生かし、『12ヶ月中、12ヶ月収入を得る』作型を実現しています。

農場を訪れたのは4月。あいにくの大雨で、さつまいもを貯蔵している倉庫の中で、お話を伺いました。品種は、べにはるか。昨年10月に掘り上げたイモが、貯蔵されています。
関東以北の産地では、冬の間、イモを低温にさらさないように、専用の施設で温度管理する『キュアリング貯蔵』が必要なのですが、ここでは断熱材を入れた倉庫で、常温のまま冬を越せる。それもまた、指宿の気候のなせる技です。
青果用のさつまいもといえば、てんぷらや大学イモなど、料理やお菓子の材料としてスーパーの店頭に並んでいました。ところが今、松下さんのさつまいもは『焼き芋用』として出荷されています。どこのスーパーも店内に専用の機械を置いて、焼き芋を販売するようになりました。中には3~4台置いている店も。今や焼き芋もスーパーで買う時代なのです。
冬の間、じっくり寝かせると、焼き芋の糖度が50度まで上がるものも。自社の糖度計で測定しています。」
そんな松下さんのさつまいもは、焼き芋売り場で大人気。関西の仲卸業者を介して、注文が入ったら、イモを洗い、両端をカットして、東京や関西のスーパーへ――。
契約栽培で出荷しています。


いち早く、スナップエンドウの栽培に着手
松下さんは、父の代からさつまいもをメインに栽培してきました。ところが、1994年鹿児島県で、植物防疫法で特殊害虫に指定されている『アリモドキゾウウシ』が発生。これが入ったイモは移動禁止。つまり販売できなくなってしまうのです。根絶するには、何年かかるかわかりません。
根絶できない時のことも考えて、イチゴの栽培を始めました。
いらなくなったハウスの部材をあちこちから集め、70a分のハウスを建設。土耕で『とよのか』を栽培しました。11月末~翌年3月に収穫を迎えますが、3月になり気温が上昇するとイチゴはどんどん実をつけ出して、収穫が追いつきません。
300gのパックで1日に3000~4000パック穫れました。こりゃ大変と、イチゴ狩りの観光農園を始めました。このあたりにイチゴ狩りのできる場所はなかったので、そりゃもう盛況でしたよ。
結局、アリモドキゾウムシは1年で根絶されたのですが、松下さんは、さらに『次の一手』を打っていきます。
それは今から20年ほど前、さつまいもをお菓子の原料として売り込もうと、東京の商社へ商談に訪れた時のこと。偶然入った新橋の居酒屋で、不思議な豆を目にしました。甘味の強い豆なのです。
たしか静岡産だったと思いますが、初めて食べたらおいしかった。これは面白い。うちでも作ってみよう。それがスナップエンドウでした。
最初の5年は、なかなか売れませんでした。
それでもイチゴの観光農園を訪れるお客さんには
「これは美味しい!」と大好評。スナップエンドウの知名度が全国的に上がっていくにつれ、鹿児島県での生産量も伸びていきます。今では、莢豆の主流だったさやいんげんを追い抜くほどの人気ぶり。それを県内でいち早く作り始めたのは、松下さんだったのです。
うちのスナップエンドウを、生で糖度計にかけたら14度ぐらいありました。
その食味と甘味は、バイヤーからの評価も高く、大阪の有名百貨店のデパ地下でも販売されています。


バクタモン®とBM液が威力を発揮
松下さんのさつまいもは、「焼き芋にするととても甘く、おいしい」と大好評。また、スナップエンドウは、イチゴ栽培を終了した後も主要な作物となっていて、甘味の要求される作物です。それを実現しているのは、温暖な指宿の気候と、開聞岳の火山灰由来の礫土。そしてバクタモン®を作った土作りです。
(有)ファームランド豊では、地元で肉牛を飼っている畜産業者にバクタモン®を持ち込んで、牛ふん1t当り5kg混ぜるようにお願いしています。9月になると、そうして発酵させた堆肥を、3~4ha当り100t散布して、土作りを行います。

バクタモン®を混ぜることで、堆肥の分解が早く進み、土に馴染みやすくなるので、結果的に肥料のもちが良くなるのです。
指宿周辺の土は、かつて開聞岳が噴火した時に放出された小石のような粒状の礫土壌。
土の粒子の細かい水田地帯では、大雨の後はぬかるんで、2~3日圃場に入れないのですが、水はけのよい礫土の畑は「まるでザルのよう。翌日から入れます」と松下さん。
その代わり、水分や養分が流亡しやすいのが難点。微生物であるバクタモン®には土中の養分を保持し、土壌にキープさせる力があるので、食味の高い根菜や豆類を生み出すのです
スナップエンドウの生長期に当たる、昨年末から今年2月、南国の指宿にも例年にない寒波が見舞われました。毎日低温、そして曇天。なかなか太陽が現れない日照不足が続きました。1月には指宿では、めったに見ない霜が降りた日も。露地栽培へのダメージは大きく、莢が白くなったり、シワが寄ってしまった豆もありました。
そんな時、威力を発揮するのがBM液。今年もたくさんかけましたね
と、話す寛和さん。
BM液は微生物資材であるバクタモン®の特性を生かして開発された植物活性液。かつてバクタモン®の愛用者は、曇天続きや低温で、植物体の生長が滞った時、粉末のバクタモン®を水に溶かして養液を作り、散布する方が多かったのですが、急な低温や台風被害に見舞われると、「水に溶かしている暇もない。今すぐかけたい!」という農家の声に応えて、誕生しました。
微生物が生み出す植物生長ホルモンの一種である、インドール酢酸の作用により、悪天候の中でも、発根作用や細胞分裂促進などの機能を最大限に発揮します
一時は低温のダメージを受けたスナップエンドウも、ピンチを乗り切りました。
BM液をかけると、樹勢の回復が非常に早いんです。
鹿児島県全体が霜害に見舞われ、生産量が激減した中で、松下さんの圃場は被害を最小限に食い止め、例年よりも高値で取引することができました。


ベトナムからの実習生が活躍中。輪作で連作障害も回避
こうして(有)ファームランド豊では、
12~4月上旬  スナップエンドウ
4月下旬~5月中旬 春じゃがいも
6月中旬~7月下旬 枝豆
7月下旬~8月中旬 落花生
9月~11月 さつまいも
12月中旬 秋かぼちゃ
このように、1年のうち12ヶ月間ずっと農産物を出荷して、収入を得る栽培体系を確立しました。その中で、多くの農作業を担っているのは、外国人技能実習生のみなさん。全国の生産現場で高齢化や人口減少の進む中で、重要な役割を果たしています。
今や日本の農業だけでなく、水産や建築の現場も、彼らなしでは成り立ちません。
と話す松下さんも、7年ほど前から実習生を雇用しています。
雨の中、育苗用のハウスでは、ベトナム出身の女性の実習生4人で、苗取りの作業中でした。3年間の実習期間中、日本語検定を受け、読み書きができるようになって、帰国する人もいるとのことです。
日本語でコミュニケーションを取れる人を大事にしたいので、実習生向けの技能検定2号に合格したら、時給5円アップ。日本語能力試験のN3に受かったら5円アップ……そんな給与体系になっています。」と、寛和さん。
そして日本語のスキルを磨いて帰った実習生の中には、母国の送り出し機関で、日本語教師として働いている人もいるそうです。彼らがモチベーションを上げて、仕事に打ち込めるように、給与体系にも工夫をこらしています。
技能実習生を雇用する前は、収穫や苗の定植など、人手を必要とする作業の時だけ、地元の高齢者や女性に作業を雇って農作業を担当してもらっていました。しかし、技能実習生は3年間の契約などで、忙しい時だけ雇うわけにはいきません。
彼らに給与を支払い、農場を経営面でも回すためにも、多様な作物を育てて『12ヶ月中、12ヶ月は収入がある』栽培体系は、不可欠なのです。
そんな寛和さんは、鹿児島県農業生産法人協会の理事を務めるほか、地域の空き家を借り受けてベトナム人実習生の宿舎として活用するなど、地域にも目を配り、過疎化、高齢化、国際化が進む鹿児島県の農業を見据えて活動する、頼もしい後継者です。

農家にとって栽培する作物を限定する方が、機械や資材も集約でき、生産性は上がります。しかし、害虫による被害や、世の中のトレンド、生産現場の雇用形態を考えると、リスク分散は不可欠で、多品目を栽培するようになり、ヒルガオ科のさつまいもを筆頭に、マメ科、ナス科、ウリ科……科の異なる多様な作物を育てることはまた、輪作にもつながります。
いろんな農法がありますが、一番大事なのは輪作だと思います。同じものだけを作っていくと、収量も品質も悪くなる。いろんな品目を植えて、土を偏らせないことが、収量増や品質アップにもつながるのです」と、話す寛和さん。
人も土も、何世代も持続可能な農業を続けるには、多品目の作物を輪作し続けることが、不可欠なのです。


二代、三代と持続可能な農業を
今、日本の農業は、大きな変わり目にあると思います」と、話す松下さん。
家族経営で完結させるか、法人化して規模を拡大するか。多くの農家が帰路に立たされています。ここ20年の間に、大山地区の農家は減り続け、個人の栽培面積が大きくなっているそうです。家族経営で栽培できるのは5haが限界と言われていますが、それもまたできなくなり、農地を売りに出すケースが増えているそうです。
農地が個人資産のままなら、相続のたび兄弟の数だけ分かれていきますが、法人名義にしておけば誰かが代表になればいい。今、この地区で法人化しているのは、うちだけです。
農地を農地として残し、二代、三代と営農を継続していくためには、法人化は必須。
それはまた、地域を守ることにも通じると、次世代の寛和さんは考えています。

もうひとつ大切なのは、販売面でのパートナー。松下さんが育てる作物の多くは、量販店や生協、高級スーパーなどで販売されていますが、直接契約を結ぶのではなく、関西の仲卸を介して売り先を見つけていきます。30年前、バクタモン®栽培のさつまいもを関西の生協へ販売した時からの付き合いで、農園(消費地)近くに物流センターを持っているのも強み。物流コストが抑えられるといいます。

2008年のリーマンショック後、肥料の値段が高騰しました。経費削減のため、肥料を減らしましたが、松下さんは、
あれ以来、化成肥料の使用量は、大幅に減りました。だけど、それで農作物がダメになったわけではなく、収量も品質も例年通り確保できました。それでもバクタモン®は減らしていません」とのこと。
時代の流れや、気候の変動を見据えながら、臨機応変に作物やスタイルを変えてきた松下さん。ゆくゆく寛和さんにバトンタッチして、土も、人も、地域も、持続可能な農業を続けていくためには、微生物の力を借りて、土の力を最大限に引き出すバクタモン®は、欠かせぬパートナーなのです。

●有限会社ファームランド豊
  http://farm-yutaka.jp/





2018年4月 取材・文/三好かやの


 




マルヤファーム様
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「猛暑を乗り越え「はるみ」が一等米に」

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「有機の里づくりで黄綬褒章を受章」

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