バクタモンによる土壌改善事例

                                       北海道当麻町  辻 通 氏
                                                 
                                  
(資料提供:有限会社福清産業)
 

≪ご紹介≫
 辻氏は養豚(90坪畜舎)とほうれん草ハウス(60坪×12棟)の複合経営を行っています。大量にできる豚糞厩肥(木屑)が未熟のまま空きこまれ、その量は1棟当り5t以上運用していました。加えてリン酸の吸収が強い土ということで年4作の毎回基準施肥+重焼リンのリン酸多用の施肥を続けていたため、未分解有機物の蓄積による窒素肥効の不安定化に、リン酸・カリ・苦土の過剰が重なり、生育障害や病気が多発するようになっていました。
 指導機関からは、堆肥を減らすように指示があったのですが、豚糞処理上、どうにもならない面があり判断に迷っていたところ、知人からバクタモンの話を聞き、微生物で何とかなるのでは?と取り組んでみる事にしました。

 

   

【土壌改善】

 平成4年秋、例年実施している土壌診断を検討し、翌年からは過剰蓄積になっているリン酸・カリ・苦土を減らすため化学肥料の使用を全廃し、堆肥だけで作付けしてみることにしました。
 そのため、土台作りの第一歩は大量に蓄積されている未分解の有機物(未熟豚糞堆肥)をいかにして安定した腐植に仕上げるかという事であり、その方策として1棟当り堆肥の鋤き込みにバクタモン20kg+尿素10kgを併用しました。土の変化に気付いたのは、まず平成5年の春の耕起の時で、今までは土のこなれが悪く、砕土に苦労していたのに乾きが早くサラサラになったのに驚きました。これなら何とかやれるのではないかと半信半疑ながら当初の計画通り、化学肥料は一切使用せず、年4作の播種の都度、1棟にバクタモン10kg+尿素5kgを補給し一年間耕作してみました。

 全面積を一挙にバクタモン方式に転換したので比較はできませんでしたが、発芽障害や病気の発生もなく、生育も極めて順調で正品の歩留りが高く、好成績が得られました。生育の違いで感じられた事は2L以上に肥大しても繊維が硬くならず、生でかじってみてもほうれん草特有の苦味がなく甘味が強く感じられ、消費者の評価も良く規格品と遜色のない値段で販売できました。土の乾きが早く、潅水量が今までの倍必要でありましたが、地温の上昇が早く出荷が3~4日早まりました。これはバクタモンによる土中の未分解有機物の分解・発酵に伴う発熱のためと思われました。

 平成5年秋、同一ハウスの土壌診断で明らかな変化が見られた数値の比較が次の通りです。



【土壌診断測定値比較表】

   pH EC  有効態
リン酸 
置換性
石灰 
置換性
苦土 
置換性
カリ 
CEC  塩基
飽和度 
 平成4年秋  4.88 0.57  243  383  126 80.0   23  94% 
 平成5年秋 4.75 0.28  284  204  36  11.8  43  22% 
 平成7年春 5.40 0.33  537  315  104  28.1  27  63% 

 *平成4~5年は鋤き込み前に採土、平成7年は前年鋤き込み時にホタテ貝殻粉末40kgを加用し、春の播種前に採土検定した。
 有効態リン酸の数値が極端に高くなっているが、そのための障害的な症状は全く見られず(固定されている不溶性リン酸を強制的に引き出すバクタモンの特性)腐植の持つ緩衝力が働いているものと解釈する。糞出しの際、坪当りバクタモン50gを添加する事で悪臭をなくし、切り替えしなしでも堆肥化が進み圃場散布の労力が軽減される利点もある。
 ECが下がり、極端に過剰であった苦土・カリが減少し、CECがアップという改善結果と不溶化リン酸が消費量以上に有効化してくるバクタモンの効力も確認できたので、本年も引き続き同じ方法で栽培を続けています。今のところ、昨年より生育むらがなく安定しており順調な経過に満足しています。



【バクタモン農法への転換に当たっての指示と考察】
    
1.豚糞堆肥・厩肥について
 敷藁におが屑を利用しており、通年豚舎出しの積み重ねで切り返しがされず発酵不十分であったので、まず豚舎から出す時点で一区画当りバクタモン100gほどを振り掛けて持ち出す事をはじめてもらった。
 十分とは言えないが以前より発酵が進み、臭気も薄れ効果があるように感じられた。

2.1棟当りの堆肥投入量
 年間出る豚糞全量を処理するため60坪に5t以上となり過多である点は致し方がないので、鋤き込み時に再度バクタモンを添加し微生物の数を増やし、分解を進める手段を取った。冬を越した春耕で、今まで乾きが遅くて苦労していたのに、表土がサラサラに変わり播種が非常に楽になった。

3.pHについて
 pH4.7~4.8ではほうれん草は育たないとの観念があるが、以前pH4.7の土壌でバクタモン栽培の長ネギが立派に生長している実績があったので心配はなかったし、結果的に発育も揃い生育も順調であった。サンプルの土は、4作収穫後の養分減少時のものであり、秋の診断で一挙にCECが倍加した事で塩基飽和度が下がりpHの低下減少が生じたものと解釈される。また有機物が土中で分解・発酵しているときはpHが下がるという見方もある。

4.ECの低下について
 土中の微生物を殖やしたことで、遊離窒素が菌体に取り込まれ、有機態になったため土中窒素の無機化が抑制され安定したものと考える。

5.有効態リン酸増加について
 リン酸過多が明らかであったのでリン酸肥料の使用を止めた。一年消費したにも関わらず収穫後の調査値が増加したのは堆肥中に必要量のリン酸があることと、長年のリン酸多用で土中に蓄積・固定されていた難溶性リン酸がバクタモンの働きで引き出されたものと考える。

6.苦土・カリの減少について
 過剰であったため、無施用で作付けした結果、苦土は基準値まで下がりカリの過剰も大きく緩和された。

7.CECのアップについて
 未分解有機物が多く、腐植の造成ができない胃袋の小さい土であったものがバクタモンの繁殖によって腐植化が進み、より高い能力を持つ土に若返りつつあるのだと解釈できる。


【今後の課題】
 引き続き現行法で栽培する事が無難である。毎年土壌診断を行い、塩基類のチェックをする事は大切だが作物の生育状況をよく観察する事の方が大切である。リン酸・カリはまだ多く、ここ数年無施用で充分対応できるし、腐植形成が進み微生物の活性が安定すれば肥料養分の放出もバランスが保たれ、作物の健康も維持されるはずである。微量要素を含め、石灰分については土質を固くする傾向があるので充分注意を払う必要がある。有機石灰等の投与でカルシウム補給を考えるべきである。
 今後、栄養腐植の蓄積が多くなり、地力窒素の発現が増すようになると思われるので生育状態に合わせてバクタモンと尿素の混合割合や投与量を調節していくようにしたい。


【参 考】
 豚糞堆肥について(おが屑入り)10a当り10t投与の肥料成分

   N P  K  Ca  Mg 
 標準要素含有量  0.95% 1.39%  0.65%  1.28%  0.42% 
 利用率換算 70%
66.5K
70%
97.3K 
90%
58.5K 
   
 置換可能量 60%
39.9K
60%
58.4K 
60%
35.1K 

128K 

42K 
 60坪ハウス
5t投与では
 約20K 約24K  約18K     



   


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